モタイノミミブログ

一生モノコレクターがコレクションの中からお気に入りのモノを気ままに紹介するブログです。

キップとステア

グローブにはどの革がいいのか!?

 

Q:グローブに使われている素材は何でしょう?

その答えは”牛革”なんですが、そもそも”牛革”といっても一種類だけではありません。

牛の成長段階によって、また使われる部位によって名称が違います。

 

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まずは年齢別の革についてご紹介したいと思います。

  

キップレザー(Kip)

キップという革は、仔牛と成牛の中間にあたる牛の革です。生後6か月~2年未満の牛を指します。キップの革は、軽くてきめが細かく、柔らかいのが特徴です。同時に仔牛の「カーフ」よりは年をとっているので、繊維の密度が高く強度も兼ね備えており、主にある程度以上の品質が求められる高級な小物や靴などに用いられています。

初めてグローブにキップレザーを採用したのは某大手メーカーで、最高級ラインの新商品を発売するにあたって差別化の意味でキップレザーを採用したそうです。それが大ヒットして以来業界に定着していったようです。

 続いてはさらに若い仔牛のカーフレザーです!

 

カーフレザー(Calf)

カーフという革は、厳密には、生後6カ月位までの仔牛の原皮を用いた革のことを指します。人間の肌が大人より子供の方がキメ細かいことを想像すると分かりやすいですが、キメが細かく繊細で薄く柔らかい革手触りがとても滑らかなのが特徴です。仔牛なので傷が少ないですし、見た目がとても美しいレザーです。

仔牛のため採れる量(面積)が極端に少なくそのため希少価値がとても高いです。

 

しかしこのカーフ欠点もございます。それは「耐久性の低さ」です。カーフは薄くて柔らかいため、強く引っ張ると破れることがあり、摩擦や乾燥にも弱く、雑に扱うとひび割れなどを起こしてしまいます。

キメの細かさや柔らかさがある反面、耐久性が低く、きちんと扱わないと長持ちしにくいのもカーフの特徴です。

 

それゆえグローブにはあまり向いている素材とはいえません!


ちなみに実は「カーフ」と「キップ」を明確に分類しているのは、どうやら我が国

日本だけで欧米ではどちらも「カーフ」と呼ばれているのが現状です。

 

そして最も一般的なのがステアレザーです。

 

ステアレザー(Steer)

生後2年以上で、生後3ヶ月から6ヶ月の間に去勢された雄牛の革です。穏やかに成長するので、去勢されていない雄牛の革よりも革質がやわらかくなっています。カーフやキップに比べると、柔らかさと表面のキメの細かさは劣りますが、厚みがある分、強度に優れているのが特徴です。去勢されているためか、厚みやキメが原皮一枚の中で比較的揃っているので無駄がなく扱いやすいため、様々な用途に使用される素材です。

ステアは丈夫な革なので、比較的お手入れが簡単です。また、革自体の品質もあまりぶれることがないため、個々の製品の仕上がりも安定しています。

ステアは、肉牛として育成された牛を食用した際の副産物です。
需要と供給がつり合った最も一般的な牛革といえます。

またステアは原料重量によって呼び方が異なりライトステア、ヘビーステア、さらにはエクストリームライトステアなどと分けて呼ぶことがあります。

 

一般的なグローブは大抵このステアレザーだと思っていただいて結構です!


カウレザー (Cow)

出産を経験した生後2年以上経った雌の成牛の革です。厚さ、強度については、キップとステアのほぼ中間と言える素材ですが成牛であるため面が大きく取れるため大型の鞄やジャケットに使用されるケースが多いのが特徴です。


ブルレザー (Bull)

去勢されることなく生後3年以上の雄牛の革。厚くて丈夫で靴のソール等に使用されことが多い革です。繁殖用として去勢されずに育った雄牛は革が硬く丈夫なのが特徴です。ただし気性が荒いため喧嘩が絶えず革表面のキメが粗く傷が多いのが特徴です。綺麗な艶感を出すというよりは、靴底など強度が求められるところに使用されることが多いです。

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こちらはキップレザーを使用したワールドペガサスの硬式グローブ


同じキップ表記のグローブステア表記のグローブでもメーカーによって艶や質感が全然違うのは、素材のクオリティーが違っているのもありますが、鞣しの方法や染色方法が違う方です。もっと詳しく言うと各メーカーがタンナー さんに依頼する依頼内容が違っているからです。

中にはあのメーカーのグローブと同じ革でなどの発注もあるようですが・・・笑

革を鞣すタンナー さん自体の数が少ないこともあり同じタンナー さんがいくつものメーカーの依頼を受けていたりしますからね。

各メーカーには売り出したい製品の価格帯があって、それにあった素材(革)を予算の中で依頼するわけです。タンナー さんは商売ですので各クライアントの好みに合わせた革を提供していきます。

よく「あのメーカーのグローブはいい革使ってるね」と言いますが、それはメーカーの依頼によりタンナー さんがいい革を作り出しているからでタンナー さんの技術がスゴイんですね!それに対して予算を割いている言う意味ではメーカーもスゴイのですが!

低予算にも関わらずいい革を作ってなどタンナー さんを困らせるメーカーがないことを願います。笑

タンナー さんにお話を聞くと「あのメーカーのこのシリーズはこの価格でよくこの革使ってる」や「あのメーカーは革にお金かけてる」など”革側から見た商品”のお話が聞けます。

革好きな私も当然商品の購入する際は”革側”から選ぶことになり、どのメーカーが ”価格に割りに良い革を使っているか” また ”この革でこの価格!?”  "最近革のクオリティーを落とした" などわかってきます。

 

この辺の話はまたご紹介させていただきます。



             LR